メンタルは「心の強さ」だと思っていた

― 緊張するからこそ、ゴルフは面白い ―

これまで長くゴルフを続けてきましたが、比較的最近になって改めて学んだものがあります。

それが**「メンタル」**です。

以前の私は、メンタルというと、

「心が強い」
「プレッシャーに負けない」
「緊張しない」

そんな精神的な強さのことだと思っていました。

しかし、実際に専門の先生から学んでみると、私が考えていたものとは少し違いました。

そしてその学びは、私自身のゴルフにも大きな変化を与えてくれました。

きっかけは、女子プロを目指していた教え子

当時、私が中学生の頃からレッスンしていた、女子プロを目指している選手がいました。

プロテストでもかなり良いところまで進んだことがありましたが、合格には届かず、その後も挑戦を続けていました。

そんな中、本人から、

「プロテストに向けたメンタルを教えてくれる先生がいる」

という話を聞きました。

私自身もメンタルには興味がありましたし、彼女を指導している以上、私自身が学んで、それを彼女にも伝えられたらいいのではないか。

そんな気持ちから、私もメンタルについて学び始めました。

「メンタル」を4つに分けて考える

最初の講義で先生から、

「メンタルとは何だと思いますか?」

と聞かれました。

私は「心の強さ」「精神力」のようなものをイメージしていました。

ところが先生から教えていただいたのは、メンタルを漠然とした「心」として考えるのではなく、

「思考」「行動」「身体反応」「感情」

の4つに分けて考える方法でした。

特に印象に残ったのが、

思考と行動は、自分から働きかけることができる。

一方で、緊張して心臓がドキドキするような身体反応や、不安などの感情は、すぐに自分の思い通りにしようとしても難しいということでした。

だから、

「緊張するな」

「不安になるな」

と感情を直接変えようとするのではなく、まず自分が変えることのできる思考や行動を変えてみる。

深呼吸をする。

水を飲む。

ルーティーンを行う。

実際に表を作って、その時の感情や身体反応を点数にし、「この行動をしたら緊張がどのくらい変化したか」ということまで確認しました。

それまで漠然としていたメンタルが、私の中で初めて具体的に取り組めるものになっていきました。

「結果」ではなく「今、何をするか」

もう一つ、大きな学びになったのが、

「結果意識」と「行動意識」

という考え方でした。

ゴルフをしていると、

「このパットを入れたい」

「ここでボギーを打ちたくない」

「予選を通りたい」

「今、何位だろう」

と、どうしても結果を考えてしまいます。

しかし、結果そのものを直接コントロールすることはできません。

自分ができるのは、

「そのために、今、自分は何をするのか」

ということです。

そして、この**「今に集中する」**という考え方の中で学んだのが、マインドフルネスでした。

過去のミスを考えるのでもない。

これから起こる結果を心配するのでもない。

深呼吸をして、自分の身体や足の感覚などに意識を戻し、もう一度「今」に戻ってくる。

「外したらどうしよう」

と思ったとしても、それを無理に消そうとはしない。

「ああ、今、自分はこんなことを考えているんだな」

と一度受け入れて、そこからまた自分が今やるべきことへ戻っていく。

これも私にとって非常に大きな学びでした。

試合では「身体」より「打ちたい球」に集中する

さらに、内的集中と外的集中についても学びました。

練習では、

「腕がどう動いているか」

「身体をどう使っているか」

といった自分の身体に意識を向けることも必要です。

しかし、試合になってまで身体の細かな動きを考え続けると、かえって身体が硬くなることがあります。

実戦では、

「どんな球筋を打ちたいのか」
「どこへ打ち出したいのか」

という外側のイメージへ意識を持っていく。

そして、それで自然に身体が動けるところまで普段の練習で準備しておく。

「練習でやること」と「試合で意識すること」は必ずしも同じではない。

これも私の中では大きな発見でした。

関東グランドシニアで実践してみた

その後、60歳以上のプロが出場する関東グランドシニアに出場した時、学んだことを実際に試してみました。

特に変えたのがパッティングでした。

以前の私は、打つまでの間に何度もラインを確認したり、

「入れたい」

「外したらどうしよう」

と考えたりして、必要以上に長く集中していました。

そこで、自分の順番が来るまでは必要以上にラインを見続けない。

ボールのディンプルを見たり、遠くの景色を見たりする。

そして自分の番になったら、ラインを決め、ボールを置き、ルーティーンに入り、打つ。

集中する時間を短く、明確にしてみたのです。

すると、以前とはかなり違う感覚がありました。

途中でスコアが良くなっても、

「予選を通れるだろうか」

「今、上位にいるだろうか」

といった結果への意識が以前より少ない。

そして、非常に長いイーグルパットが入ったこともありました。

「絶対に入れよう」とした結果ではありません。

むしろ、入るかどうかより、今やることに集中できていた。

この経験から私は初めて、

「集中するというのは、こういうことなのかもしれない」

と感じました。

緊張することは悪いことではない

メンタルを学ぶ中で、先生から紹介していただいた本の中に、とても印象に残っている話がありました。

トッププロであっても、大切な場面では緊張する。

手が震えることもある。

つまり、

「上手な選手は緊張しない」のではない。

では、その緊張をどう捉えるのか。

大切な場面で緊張してきた時に、

「これこそゴルフの醍醐味なんだ」

と捉える選手たちがいるという話でした。

これは私の中にとても残りました。

考えてみれば、何も感じない場面では味わえない緊張感です。

その場面が来た。

緊張している。

その中で、今まで練習してきたことを自分なりにやってみる。

そして、それができた時に感じるもの。

私はそこにも、ゴルフの「楽しさ」があるのではないかと思うようになりました。

ただ楽だから「楽しい」のではない。

緊張する。

難しい。

うまくいかないかもしれない。

それでも、その中で自分がやろうとしたことができた。

その時に感じる喜びも「楽しい」ということなのだ。

長くゴルフをやってきましたが、このことを言葉として理解できたのは、私にとって大きなことでした。

一度できても、次はできなかった

ところが、関東グランドシニアでうまくできたからといって、その後ずっと同じようにできたわけではありませんでした。

その年の全日本グランドシニアでは、思うようなプレーができませんでした。

そして翌年の関東グランドシニア。

前年と同じようにやろうとしましたが、なかなか同じ感覚にはなりません。

それでも予選を通過し、再び全日本へ進むことができました。

その頃、もう一度先生と話した時に言われた言葉があります。

「メンタルもトレーニングなんですよ」

この言葉で、また一つ気づかされました。

「分かる」と「できる」は違う

身体のトレーニングも、一度行えばずっとできるわけではありません。

スイングも、一度良い球が打てたから完成ではありません。

メンタルも同じでした。

試合になった時だけ、

「今に集中しよう」

「結果を考えないようにしよう」

と思っても、簡単にはできない。

普段から繰り返しておくことが必要だったのです。

普段のラウンドから、自分が今何を考えているのかに気づく。

結果に意識が向いていたら、今やることへ戻す。

呼吸やルーティーンも普段から行う。

マインドフルネスも、試合の時だけ行うものではない。

そうした小さな積み重ねそのものが、メンタルのトレーニングだったのだと思います。

そして、もう一度全日本へ

そうしたことを改めて意識して臨んだ全日本グランドシニア。

特に最後のハーフでは、自分の中で非常に良い集中ができました。

結果のことを必要以上に考えず、

「今、自分がやること」

に集中する。

後から振り返ると、あの時が一番、私が学んだことを実戦の中で表現できた時間だったのかもしれません。

最終的には全体で16位前後で大会を終えることができました。

順位ももちろん嬉しかったのですが、それ以上に、

緊張感のある試合の中で、自分がやろうとしてきたことができた。

そこに大きな充実感がありました。

そして、それこそが私にとっての「ゴルフを楽しめた」ということなのだと思います。

分かる。そして、続けることで「できる」へ

この経験から私が学んだのは、

「分かる」と「できる」は違う。

そして、

「一度できた」と「いつでもできる」も違う。

ということでした。

知識として分かる。

やってみる。

一度できる。

できない時もある。

また練習する。

そして繰り返していくうちに、少しずつ自分のものになっていく。

これはメンタルだけではありません。

ゴルフスイングも身体の使い方も、そして今まで私が学んできた多くのことも同じなのだと思います。

今、私がレッスンで大切にしている、

「見えるから、分かる。
分かるから、できる。」

という考え方。

その「できる」ためには、やはり続けることが必要です。

そしてもう一つ。

緊張することも、失敗することも、思うようにできないことも含めてゴルフです。

その中で、

「今、自分ができることは何だろう」

と考え、それを実行してみる。

そしてできた時の喜びを味わう。

今の私にとっては、それもまた、

「ゴルフを楽しむ」ということなのだと思っています。